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印象記

内観特別講演会 石川洋「泥舟から報恩の舟に」を拝聴して


『雨ふるふるさとははだしであるく』 (種田山頭火)
雨降る
  ふるさと
  天からの恵みの雨
  母います、ふるさと
  私という大地に天から、父母から、恵みの雨が降る
  そんなふるさと

自らを捨てて、私を産み、育ててくださった母
たとえば、(白鳳期までだろうか)古い仏像の姿を見ると、
表は慈愛に満ちた、母の面影
しかし、後姿は、荒削りのまま、
この後姿こそ、表に決して見せることの無い、あるがままの姿

仏とは、自分を捨てきって解脱した、理想の姿
自分を捨てきって、他のためにつくす、仏の菩提心
母の背中と重なる・・・

父母も私と同じ、一人の人間
苦しみも、悲しみも、
荒削りの背中を見せないけれど、
私と同じ、なにも出来ない儚い一人の人間

石川氏は、常に父母の写真を懐中に収め、
朝にはいつも、父母と「生きた話」をされている
それが、生きる力になる

私の命の根源は、父母、さかのぼれば宇宙の根源まで・・・
命の根源は、ふるさと

父母のまた父母は我なり
我を愛せよ 我を敬せよ

誰の心にも、鬼が棲む
人には、解決できない、どうすることもできない業がある
それでも、私は生かされている
いつも、誰かに、何かに、導かれている

自分を捨てよ 全てを任せよ
私は何もできないのに
唯自分を見つめよ 父母を見つめよ
悲しくても 苦しくても
懐かしいふるさとに 雨が降っていても たとえそこが修羅場でも
裸足で 歩け
命の 宇宙の根源が そこにある

ふるさとは みんなさみしく なつかしく (石川洋)

母にしていただいたことに対して
何一つ尽くすことはできない
それならば 母になしたるように
他の人に尽くしなさい
(涅槃経)

偉い人ではなく
立派な人でなく
人のお役に立つ人になりなさい
(西田天香)

内観は 本来 当たり前のこと
それすら出来ない私を見つめるのが 内観
素直になれない私は
父母の力をもらう資格のない私は
内観すらできない私は
ふるさとが見えない私は
本当に なんにもできない ただのひと
だから
自分を捨てよ
全て任せよ
といわれた気がした

屏風のなかに膝をかかえ
さなぎのように
いつか押し出される力を頂いていることを知るために
天からの力 父母からの力 全ての人からの力・・・
命の根源を知ることが 生きることだとしたら
内観することが 生きることになるのかしら

私は摂食障害
心の奥に棲みつく不安を、怒りを、口を満たすことで刹那的に忘れようとしている
そのときだけ深い深い、はてしない快楽に落ち込み、
しかし、覚めたとき、後悔の嵐

なぜこんな病に取り付かれているのかと5年程もがき苦しみ、
でも自力でなんとかしようと、
私は去年の4月に、病院ではなく、内観の扉を叩いた。

屏風の中では、食べ物のことを考えなくて済む、それだけで心地よく、
実際の内観になると、母に対して、一つふたつ思い出すのが精一杯
本当に、ほとんど思い出せなくて、終わってしまった
きっと、思い出さないように、自分で記憶に鍵をかけているのだろう

だから、鍵をこじあけようとすると、トラウマが私を襲う
親が好き、嫌い、ではなく・・・
記憶のまだない赤ちゃんの頃から、私は恐れと怒りにみちて生きてきた

そんな私に、親に感謝、親にふるさとを感じる・・・
本当は、それだけでトラウマが蘇り、見境がなくなってしまう

でも、これからは、親からの恐怖を感じないで、自分らしく、思うが侭に生きたい
私の家はないと信じていたけど、心のふるさとを、感じてみたい
そして、私の病も いつか感謝のエネルギーになるように
私の病が 天からの恵みの雨であるように
私の力になるように

地湧菩薩
この世を救うものは地から湧き出る力
天からの恵み
すなわち父母の恵み知ることによって
地が 私が 潤うことが出来る

これからどうなるのか、誰にも分からない
でも
いつか内観できるときが来ることを、信じている
そのときは
どしゃぶりのふるさとを
裸足で歩きたい

石川氏をはじめ 今日私をここに導いてくださったすべてのすべての人に感謝したい

(Sachiko.K)
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特別講演会

◇内観特別講演会のお知らせ◇

●日 時: 平成20年7月27日(日)午後12時半受付開始・午後13時~16時
●会 場: 薬園八幡神社(JR郡山駅徒歩約4分・近鉄郡山駅徒歩約10分)奈良県大和郡山市材木町32(大和内観研修所のすぐ隣です)電話:0743-53-1355
※当初の会場(大和郡山市市民交流館)から変更になっておりますので、ご注意ください。
・費用 千円

特別講演「泥舟から報恩の舟に」(講師:石川洋)

四年前七日間が山ですよという診断を受け透析治療を受ける。入院者となって辛かったことは、「何故この病に倒れたのか」という、自分を責める矢が四方八方から迫ってくるマイナスのエネルギーにさいなまれたことである。
これではいけないと気づき、「面会謝絶」の病室の符に「只今さなぎ中」という紙を添えた。土中にもぐりこみハッとした。次ぎつぎに計りしれない多くのご恩が湧き出てくるではないか。それ迄さなぎは自分の力で土の上にはい上がるのだと思って来たが、押し出される力をいただいていることをしった。
そう受けとめた時、自分を責める多くの矢が外に向きを変えていくではないか。自己中心の泥舟から恩愛の舟に乗りかえることが出来た。今、病いの縁を報恩のエネルギーとして、感謝感動の日々を送らせて頂いている。
◇講師プロフィール◇
石川洋(いしかわよう)昭和5年2月15日、栃木県鹿沼市に生まれる。キリスト教の家庭に育ち、戦時下の青年期に戦争と人間の生死について苦悩。戦後、牧師を志すが、昭和22年4月、一燈園創始者・西田天香師に出逢い、師事。托鉢者として今日に至る。
東南アジア難民救済、スラム支援、在韓被爆者、忘れられた日本人妻などの支援活動を精力的に展開。2000年10月韓国から国民褒章、カンボジアから国家建設功労第一等勲章を受賞。現在も、教育・福祉・経営など、各方面での講師として東奔西走。人間の根本にせまる講演は大きな感動と反響を呼んでいる。(公式ホームページより)

◆タイムスケジュール◆
午後12時30分  受付開始
午後13時     主催者あいさつ
午後13時15分  特別講演 石川 洋「泥舟から報恩の舟に」
午後14時45分  休  憩
午後15時     内観体験発表
午後15時30分  質疑応答(座長:真栄城輝明)
午後16時     終  了
●会場が変更になっております。不明の点は下記の事務局へお問い合せ下さい。また、当日はプログラムに若干の変更があるかも知れません。
◆お問い合わせ◆
大和まほろばの会事務局(大和内観研修所内)
TEL 0743-52-2579
mail naikan3@nifty.com

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平成20年度第一回シリーズ内観セミナー 第二回講義のお知らせ
お陰様でシリーズ内観セミナーは5月11日に第一回「現代社会と内観」(巽信夫)が開催され、活発な質疑応答が繰り広げられて、盛会裏のうちに終えることが出来ました。ご参加いただいた皆様に心より感謝申し上げます。引き続きまして、7月13日には、鈴木茂先生(楽メンタルクリニック院長)を迎えして、第二回「パーソナリティ障害化という今日的問題」を開催いたします。たくさんの方のご参加をお待ちしております。

「パーソナリティ障害化(Personality disorder)という今日的問題」
◇講義紹介◇
「今日のうつ病は、かつていわれていたように『真面目で責任感の強い、社会的・職業的な役割に従順な人たち』ばかりでなく、むしろその逆であるような『うつ状態』の人間が社会に蔓延してきました。つまり『うつ病のパーソナリティ障害(Personality disorder)化』という現象が『職場のメンタルヘルス』に関する喫緊の課題になっていて、私もこの2年間、産業医の研修会に招かれて講演してきました。」これは講師の鈴木茂先生が今回のセミナーに向けて送ってくれた私信の一節である。そこで、最初に設定したテーマ「境界例の理論と実際」を鈴木先生の意向により『パーソナリティ障害(Personality disorder)化という今日的問題』に改題することになった。鈴木先生は今回の内観セミナー参加者に向けて、「『パーソナリティ障害(Personality disorder)化の問題』は、単にうつ病だけにとどまらず、BPD(境界性人格障害)やNPD(自己愛性人格障害)や解離性障害の今日的な増加をもたらしています。その辺の精神病理や社会病理を一括して論じるつもりです。」とのメッセージを送ってきた。今回のセミナーに対する強い意気込みが感じられた。楽しみである。(大和まほろばの会 代表:真栄城輝明)

◇講師紹介◇
鈴木茂(すずきしげる)。1948年 東京生まれ。1973年 東北大学医学部卒業。85~86年ドイツ・マールブルク大学医学部精神科客員研究員(フンボルト奨学生)、県西部浜松医療センター精神科科長を経て2007年4月から楽メンタルクリニック院長。精神保健指定医、医学博士。日本精神神経学会専門医、日本総合病院精神医学会指導医。日本精神病理・精神療法学会評議員。雑誌『臨床精神病理』編集委員。静岡大学非常勤講師。日本精神神経科診療所協会会員。著書に『境界事象と精神医学』『人格障害とは何か』(岩波書店)『境界例 vs 分裂病』『人格の臨床精神病理学』(金剛出版)ほか多数。

・日 時:7月13日(日)10時受付開始 10時30分~12時30分
・会 場:大和郡山市市民交流館3階大会議室(JR郡山駅東口すぐ・近鉄郡山駅徒歩十分)奈良県大和郡山市高田町92-16 TEL:0743-51-1155※会場までの地図が必要な方は事務局までお問い合わせ下さい。
・対 象:内観セミナーに関心のある方ならどなたでもご参加いただけます。
・参加費:5,000円
・定 員:50名(先着順)※定員になり次第、締め切らせていただきます。
・申 込:必要事項(氏名、住所、年齢、職種、電話、メールアドレス)を記入の上、郵送又はFAXにて事務局にお申し込みください。メールでの申し込みも可能です。参加費はまほろばの会の口座(ゆうちょ銀行・口座番号:00900-4-193885 口座名:大和まほろばの会)に専門用紙(振替払込書)にて納付してください。専門用紙は全国の郵便局に用意されています。ご不明な点がありましたら事務局までお問い合わせください。

◇お問い合わせ◇ 
大和まほろばの会事務局
〒639-1133 奈良県大和郡山市高田口町9-2 大和内観研修所内
TEL:0743-52-2579
FAX:0743-54-1376
e-mail:naikan3@nifty.com


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シリーズ内観セミナー単独受講者募集のお知らせ
 
先日より本年度より開講いたしますシリーズ内観セミナーのご案内をさせていただいております。「現代社会と内観」(巽信夫先生)の開講が5月11日(日)に迫ってまいりました。シリーズ一括申込及び公開講座(「ヨーガと内観」(木村慧心先生))につきまして、まだ若干定員に余裕がありますので、ご希望の方はどうぞ事務局までお申し込み下さい。
 さて、ご案内をさせていただいてから複数の方からご意見をいただきました。いくつかをご紹介いたしますと、
 ・日程の都合でシリーズを一括で受講できないので、単独での参加は可能ですか?
 ・受講対象が「対人援助職」ということなのですが、講義だけの参加は無理ですか?
 ということでございました。
 出来るだけ参加希望者のご要望にお応えできればと思い、事務局で協議させていただきました結果、定員を50名に設定し、単独受講者を募集させていただくことになりました。また、それぞれの回の講義のみ、対人援助職の方だけでなく一般の方にもご参加いただけるようにしたいと思います。※事例検討会につきましては、守秘義務が発生いたしますので、対人援助職の方以外の参加はご遠慮いただきますようお願い申し上げます。

【対象】内観セミナーに関心を持たれている方。※一般の方は講義のみの参加になります。

【日程・費用】
①5月11日(日)「現代社会と内観」(巽信夫先生)
→講義のみ(参加費・5,000円)・・・当日(5月11日)まで受け付け
②7月13日(日)「境界例の理論と実際」(鈴木茂先生)
→講義のみ(参加費・5,000円)・・・当日(7月13日)まで受け付け
④11月9日(日)「学校現場のメンタルヘルス」(人見一彦先生)
→講義のみ(参加費・5,000円)・・・当日(11月9日)まで受け付け
⑤ 2月8日(日)「ナラティヴ・ベースト・メディスン」(中川晶先生)
→講義のみ(参加費・5,000円)・・・当日(2月8日)まで受け付け
※各回とも、定員(50人)になり次第、締め切りとさせていただきます。
※募集は講義のみですが、対人援助職の方で講義の受講に引き続いて事例検討会の参加をご希望の方は事務局までお問い合わせください。

【申込方法】必要事項(氏名、住所、年齢、職種、電話、メールアドレス)を記入の上、郵送又はFAXにて事務局にお申し込みください。メールでの申し込みも可能です。また、参加費を下記の口座(ゆうちょ銀行)に専門用紙(振替払込書)にて納付してください。用紙は全国の郵便局で用意されています。
・口座番号 00900-4-193885(大和まほろばの会)

【セミナー会場(大和郡山市市民交流館)のご案内】
奈良県大和郡山市高田町92-16 TEL:0743-51-1155(JR郡山駅東側すぐ、近鉄郡山駅徒歩10分)※案内の地図をご要望の方は事務局までお問い合わせください。

【大和郡山へのアクセス】
【奈良から】JR大和路快速乗車約10分
【大阪から】JR大和路快速乗車約40分 
【京都から】JRみやこ路快速乗車(奈良で乗換)約50分

【お問い合わせ】
大和まほろばの会 事務局
〒639-1133 奈良県大和郡山市高田口町9-2 大和内観研修所内
TEL:0743-52-2579 
FAX:0743-54-1376
e-mail:naikan3@nifty.com

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内観セミナーへのご案内

平成20年度第一回シリーズ 内観セミナーのご案内

主催:大和まほろばの会
代表 真栄城輝明(大和内観研修所・臨床心理士)

内観セミナーへの招待
真栄城輝明(大和内観研修所)

このたび内観セミナーを開催することになりましたので、関係各位にご報告方々ご案内を差し上げる次第です。セミナー企画の経緯は以下のようです。
昨年の平成19年10月27~28日に第19回内観療法ワークショップを奈良にて開催致しましたところ、予想を超える参加申込があり、準備委員一同にとっては嬉しい悲鳴となりましたが、会場の収容人数に制限があって、一部の方々には、ご参加をお断りせざるを得ない事態となりました。改めてお詫び申し上げます。アンケート結果はもとよりですが、直接、間接に寄せられた声に耳を傾けていると、内観に対して様々な希望があることが分かりました。いくつかを紹介するとこうです。

①人間関係がうまくいかず“うつ病”になってしまう人が増えているが、職場のメンタルヘルスに対して内観は役に立つでしょうか?
②最近、内観研修所に“境界例”と診断を受けた方の来所が増えてきたが、対処の仕方があれば教えて欲しい。
③ワークショップのシンポジウムが大変良かったので、再度、今度はじっくりお話を聞いてみたい。
④内観と組み合わせて使える他の心理療法があれば、学んでみたい、など。

これらの希望に応えることはできないものかと思案を重ねた結果、内観セミナーを企画することになりました。そこで、今回、企画された内観セミナーでは、欧米の心理療法やインドのヨーガなどに精通しているだけでなく、内観にも深い理解を示すその道の第一人者を講師にお迎えすることができました。
質疑応答の時間を十分に確保するために、人数を制限させていただくことになりますが、学習の質を保つためにはやむを得ないことと考えました。関係各位にはご理解いただければ幸いです。内容はレクチャーや事例検討、あるいは実習を盛り込んだプログラムになっています。事例の提供は、参加者の中から募りたいと思っております。ご希望の方は参加申し込みの際に事務局までお知らせ下さい。参加資格は日本内観学会や日本内観医学会の会員はもとより、対人援助を仕事にしている守秘義務のある方ならどなたでも参加できます。定員になり次第、締め切らせていただきますので、お早めにお申し込み下さい。

真栄城輝明(まえしろてるあき)
 大和内観研修所所長。臨床心理士。上海交通大学客員教授。日本内観学会副理事長。日本内観医学会評議員。日本サイコセラピー学会理事。著書に『心理療法からみた心のふしぎ』『心理療法としての内観』(ともに朱鷺書房)、共編著『内観療法の現在―現代のエスプリ』(至文堂)『内観療法―心理療法プリマーズ』(ミネルヴァ書房)などがある。



第一回シリーズ内観セミナー 日程(Ⅰ・講義、実習 Ⅱ・事例検討)

①5月11日(日) Ⅰ・10:30~12:30 Ⅱ・13:30~16:30
講 師:巽 信夫(精神科医、日本内観学会理事長、信州大学メンタルヘルス科専任医)
テーマ:現代社会と内観

②7月13日(日) Ⅰ・10:30~12:30 Ⅱ・13:30~16:30
講 師:鈴木 茂(精神科医、楽メンタルクリニック院長、静岡大学講師)
テーマ:境界例の理論と実際

③9月7日(日) Ⅰ・10:30~16:30(実習を含む)
講 師:木村慧心(セラピスト、日本ヨーガ療法学会理事長、米子内観研修所所長)
テーマ:ヨーガと内観

④11月9日(日) Ⅰ・10:30~12:30 Ⅱ・13:30~16:30
講 師:人見一彦(精神科医、近畿大学臨床心理センター長)
テーマ:学校現場のメンタルヘルス

⑤2月8日(日) Ⅰ・10:30~12:30 Ⅱ・13:30~16:30
講 師:中川晶(心療内科医・臨床心理士、大阪産業大学教授、なかがわ中之島メンタルクリニック院長)
テーマ:ナラティヴ・ベースト・メディスン

◇会  場:大和郡山市市民交流館 三階大会議室
※「ヨーガと内観」は実習のため、会場は薬園八幡神社になります。(大和内観研修所のすぐ隣です)

◇定  員:25名
※定員になり次第、締め切らせていただきます。当日参加はⅠ(講義)のみ参加可能です。(5,000円)

◇参加費:一般 40,000円 大学院生 30,000円(資料代込み)

 ◇備 考:「ヨーガと内観」では実習がありますので、各自動きやすい服装でお越しください。また、バスタオルをご用意願います。


第一回シリーズ内観セミナー 講義紹介

現代社会と内観(巽信夫)
“働き盛りのメンタルヘルス”と内観療法
 自殺率の急増に象徴されるごとく、“働き盛りのメンタルヘルス”へのとりくみは、昨今、大きな社会的課題となっています。この背景には、モノ的文明の飛躍的発展に伴う人間疎外の加速化が与っているといっても過言ではありますまい。東洋の知恵に根ざし、人間復活を促す内観は、まさに現代が求める本格的な癒しの法であるといえましょう。今回、まずは全人医療、全生涯発達、そしてネオ・コミュニティー医療といった既存の医学モデルを止揚する次世代医療モデルの動向につき紹介します。次いで、内観の実際とその心的転回のしくみにつき、事例をまじえつつ小生なりの見解を提示します。その上で、内観療法としての活用の現状を説明します。そして最後に、時代意識の変遷に伴う内観適用の再考と今後の課題につき言及してみたいと思います。

境界例の理論と実際(鈴木茂)
personality disorderの蔓延という今日的問題について
うつ病患者はかつて、「真面目で責任感が強く、他者配慮性をもった社会的に有能な人たち」と言われてきた。しかし今日では、この常識的なうつ病観とは正反対の、(未熟型・回避型・dysthymia型などと呼ばれる)personalityに問題を抱えた「うつ病」患者たちが増加の一途をたどり、職場のメンタルヘルスの喫緊の課題となっている。統一的な規範を失った現代社会では、そもそもpersonalityに関する正常と異常の境界が不明瞭化し、健常者の間にさえ広義のpersonality disorderが浸透している。1970年代までの「境界例」概念は、時代を下ってborderline personality disorderへと収縮する過程で、80年代には自己愛性人格の、90年代には「解離性同一性障害」の一時的な流行を生み、21世紀に入ると解離性のpersonality傾向が社会に蔓延して,必ずしも異常な現象とはみなされなくなってきたのである。こうして内観のような内省力の重視は、行動に対する外部からの直接的な制御という方法に取って代わられようとしている。そのような時代における症例との関わり方の要点を、当日は論じてみたい。

ヨーガと内観(木村慧心)
―真我を悟る東洋の智慧-
  内観もヨーガも共にインドをその発祥の地とする東洋の智慧である。内観は仏教にその源を発し、ヨーガは2500年前のゴータマ仏陀を更に遡ること2000年に及ぶウパニシャッド聖典成立時代に遡る東洋の智慧である。東洋の智慧の特徴は自己存在の悟りにある。真の自己存在を知ることで私たちは曇りのない、ありのままの世界を悟れるのである。自己の智慧の眼に曇りがなくなるからである。こうした純粋な智慧を得る為には、精神の純化とこの精神純化の有無を自覚する技法が行者に身についていることが必須である。本セミナーでは、内観とヨーガの各技法を駆使して、これら精神純化技法実習と更に、精神純化有無自覚技法を参加者と共に実習する予定である。 

学校現場のメンタルヘルス(人見一彦)
思春期の問題を考える
 いじめ、不登校、引きこもりによる子どもの苦痛は、さまざまな形でこころと身体の症状にあらわれる。子どもの情緒と行動に大きな影を与える。孤独感におちいり、絶望的な気分におそわれ、死を意識することもめずらしくない。イライラしておちつかなくなり、まわりの言動に過剰に反応することもある。母親から離れられなくなり、幼い子どもに戻ったような言動があらわれる。感覚過敏になり、恐ろしい内容の夢を見て、夜中に飛び起きる。家族と交流しなくなり、インターネットにはまり込む。それぞれに大きなこころの悩みがある。子どものこころの病理は、親の病理でもあり、社会の病理でもある。具体的事例を通して、ディスカッションしながら、その背景にある病理を明らかにしつつ、対応について考えてみたい。

ナラティヴ・ベースト・メディスン(中川晶)
病いの語り―ナラティヴの視点から―
近年、ナラティヴ(語り)という言葉が医療分野に、急速に浸透してきている。なぜこれほど浸透が早いのかというと、これまでの医療パラダイムがどうも閉塞状況にあり、医療者が状況打開のために何か別の考え方を模索していたからなのかもしれない。しかし、現在ナラティヴという言葉が独り歩きしていて、様々な派閥が作られているようにみえる。これではせっかくのナラティヴという切り口が単なる心理療法の一派として埋没してしまいかねない。そして医療におけるナラティヴも流行の一つになってしまう危険性がある。医療におけるナラティヴは、イギリスのT・グリーンハルを始めとする臨床医たちが臨床における患者の、病気観を中心にした「病いの語り」を医療に生かすことが治療的だという考え方を強力に押し進めてきた。今回は医療におけるナラティヴの、聴き手側、つまりはナラティヴにおける聴き方について、論を展開してみたい。

講師プロフィール

・巽信夫(たつみのぶお)。1967年信州大学医学部卒業。信州大学部精神医学教室助教授を経て、現在、信州大学病院メンタルヘルス外来専任医。医学博士。日本欧州共通サイコセラピー資格認定。上海交通大学医学部客員教授。役職:日本内観学会理事長、日本内観医学会理事、日本サイコセラピー学会理事、長野県産業保健推進センター基幹相談員。著書に『鬱病』(有斐閣)、『境界例の精神療法』(金剛出版)、『医心理学』(星和書店)、『心理療法の本質』(日本評論社)、『東洋思想と精神療法』(日本評論社)他多数(いずれも共著)。

・鈴木茂(すずきしげる)。1948年 東京生まれ。1973年 東北大学医学部卒業。85~86年ドイツ・マールブルク大学医学部精神科客員研究員(フンボルト奨学生)、県西部浜松医療センター精神科科長を経て2007年4月から楽メンタルクリニック院長。精神保健指定医、医学博士。日本精神神経学会専門医、日本総合病院精神医学会指導医。日本精神病理・精神療法学会評議員。雑誌『臨床精神病理』編集委員。静岡大学非常勤講師。日本精神神経科診療所協会会員。著書に『境界事象と精神医学』『人格障害とは何か』(岩波書店)『境界例 vs 分裂病』『人格の臨床精神病理学』(金剛出版)他多数。

・木村慧心(きむらけいしん)。1947年群馬県前橋市に生まれる。1969年東京教育大学理学部卒業。その後、京都大学にて宗教哲学を、インドカイバルヤダーマ・ヨーガ大学にてヨーガ療法を学び、スワミ・ヨーゲシュワラナンダ大師に師事しラージャ・ヨーガ・アチャールヤとなる。1975年米子内観研修所開設。1980年日本ヨーガ・ニケタン開設。2003年日本ヨーガ療法学会設立。現在、ヨーガ療法研究/普及活動に従事。鳥取県米子市在住。日本ヨーガ療法学会理事長。米子内観研修所所長。

・人見一彦(ひとみかずひこ)。昭和40年神戸医科大学卒業、昭和48年神戸大学医学部大学院(精神神経科学)修了・医学博士、文学部哲学科研究生、昭和50年より近畿大学医学部勤務、平成10年同教授、平成19年同退任、現在 近畿大学臨床心理センター長。平成10年日本精神病理学会、平成15年日本青年期精神療法学会、平成17年日本内観医学会、平成18年日本サイコセラピー学会大会長。著書に『子どもの心のシグナル』『こころの病がわかる事典』『学校現場のメンタルヘルス理解』(朱鷺書房)、『阪神大震災のメンタルヘルス』(金原出版)など多数。

・中川 晶(なかがわあきら)。1952年京都生まれ。1977年大阪府立大学農芸化学科を卒業し、大学院へ進学。1985年に奈良県立医科大学卒業後、大阪赤十字病院内科研修、大阪大学精神医学教室に入局。近畿大学東洋医学研究所を経て1995年なかがわ中之島クリニックを開設。2001年大阪産業大学人間環境学部助教授に就任。2005年教授に就任。イギリスにてナラティヴ・ベースト・メディスンを学んで帰国。著書に『こころの癒し方(健康ライブラリー)』『心療内科医のメルヘン・セラピー:ココロの重荷が軽くなる11の物語』(講談社)他多数。


参加申込要領

【対  象】 教職者、臨床心理士、精神科医、その他医療、教育、福祉等に関わっておられる方。また、それに関わる領域を学ぶ大学院生(教育、心理、医学、福祉等)の方。 ※事例検討が予定されていますので、守秘義務があります。

【申込方法】 必要事項(氏名、住所、年齢、職種、電話、メールアドレス)を記入の上、郵送又はFAXにて事務局にお申し込みください。メールでの申し込みも可能です。
     
【定  員】 25名 ※定員になり次第、締め切らせていただきます。
      
【申込期限】 第一回開催時(平成20年5月11日)まで

【問い合わせ】 大和まほろばの会事務局(〒639-1133 奈良県大和郡山市高田口9-2 大和内観研修所内)TEL:0743-52-2579 FAX:0743-54-1376 e-mail:naikan3@nifty.com

【参加費】 
一  般  40,000円(全五回) 38,000円(早期割引)
大学院生  30,000円( 〃 ) 28,000円(早期割引)
講義のみ参加(「ヨーガと内観」は実習含) 5,000円(早割なし)
      
※参加費は下記の口座(ゆうちょ銀行)に専門用紙(振替払込書)にて納付してください。用紙は全国の郵便局で用意されています。

・口座番号 00900-4-193885(大和まほろばの会)
      
なお、シリーズ一括申込で平成20年4月末日までに振り込まれた方は参加費が2,000円引きとなります。(早期割引)「ヨーガと内観」あるいは講義のみ参加の方は早割の対象にはなりませんので、ご了承ください。

【会場受付】開始時間の30分前より開始いたします。

※申込は原則として全五回、シリーズ一括事前申込みとなります。但し、守秘義務の関係で講義のみの参加をご希望の方はその旨をお知らせ下さい。先着順になっております。ご不明な点がありましたら、事務局までお問い合わせください。

◇セミナー会場(大和郡山市市民交流館)のご案内
奈良県大和郡山市高田町92-16 TEL:0743-51-1155(JR郡山駅東側すぐ、近鉄郡山駅徒歩10分)
※案内の地図をご要望の方は事務局までお問い合わせください。

◇大和郡山へのアクセス
【奈良から】JR大和路快速乗車約10分
【大阪から】JR大和路快速乗車約40分 
【京都から】JRみやこ路快速乗車(奈良で乗換)約50分

◇お問い合わせ
大和まほろばの会 事務局
〒639-1133 奈良県大和郡山市高田口9-2 大和内観研修所内
TEL:0743-52-2579 
FAX:0743-54-1376
e-mail:naikan3@nifty.com













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内観ブック案内

内観療法を学ぶ人のためのブックガイド




真栄城 輝明

【プロローグ】
 表題のテーマを与えられて、思案に暮れていたところ「内観(法)を学ぶには、本よりも実践しかおまへんでっしゃろ」という声がしたので驚いて、あたりを振り返ってみたのですが、誰もいません。声の主は内観法の創始者・吉本伊信のようなので、私は姿亡き師に向かって、こう問いかけてみました。
「では、ブックガイドは必要ないということですか?」
ところが、もう何も聞こえてきません。そこで、しばらく思案に沈んでおりました。が、いつまで経っても思案に落ちてこないのです。そのまま思案に余った状態でいました。そして、ついに思案が尽きてしまった瞬間のことです、本のほうから次々と姿を現してくれたのです。つまり、ここに登場する本は、みんな自分から名乗り出てくれたものばかりです。しかも、お互いに本同士で話し合って、次のような取り決めまでしてくれたのです。
「吉本先生の声にもあったように、確かに内観法は読むものではなく、体験するものだ。内観療法は内観の理論化に頑張ってくれているようだし、今回は前面に出てもらうことにしたらどうだ。内観法と教育内観は中身には触れる必要はないが、存在だけは紹介してもらうことにしよう。」注
 というわけで、今回は心理療法としての内観、つまり、「内観療法」を重点に紹介することになります。そして、みんなで合意したように「内観法」「教育内観」については、最後の方でその存在だけを紹介することになりました。
【内観療法の入門書】
①「内観療法入門―日本的自己探求の世界―」(三木善彦著・創元社・1976・1600円)は、タイトルに入門と掲げてはいますが、内容は立派な学術書になっています。その証拠に、参考文献として引用される頻度は、常に他の類書を圧倒してきた感があります。1983年の時点で6刷を出していることからも分かるように、内観界のベストセラーの一つに数えられています。著者によれば、目下、本書の第二弾を暖めているそうです。ご期待ください。
②「心身医学療法入門」(石田行仁著・誠信書房・1977・1500円)は、第3章の5節と6節に内観療法を取り上げているだけですが、内観療法と出合った医師の率直な感想が述べられていて、面白くて読みやすく書かれています。他の療法と読み比べてみたい読者にはお勧めできます。
③「内観法入門―安らぎと喜びにみちた生活を求めて」(村瀬孝雄編・誠信書房・1993・1900円)は、タイトルこそ内観法となっていますが、内容の大半は内観療法として読めるものが占めています。1999年の時点で第11刷が出版されていますが、読みやすさも手伝って今のところ一番の売れ筋だと言ってよいでしょう。蛇足になりますが、印税が日本内観学会に入るようにしてくれたのは、ひとえに編者(村瀬孝雄)の計らいによるものです。
④「自分を知りたい 自分を変えたいー内観法入門―」(杉田敬著・星和書店・1998・1900円)もまた、表題は内観法入門となっていますが、内容には臨床心理士としての著者が大学病院や総合病院の心療内科において内観療法を実践してきた事例が紹介されています。
⑤「楽ないきかた~感謝から幸福を導く『内観療法』~」(上野みゆき・文芸社・2005・1200円)を入門書に入れた理由は、文字が大きくて文章も読みやすく、所々に漫画が挿入されているため、内観療法は初めてという一般の読者にもお勧めできると思ったからです。

【中級編―内観体験後に読む本】
①「死と生の記録―真実の生き方を求めて」(佐藤幸治著・講談社現代新書・1968・250円)は、京都大学教授であった著者が定年退官する1ヶ月前に発刊された本のようですが、その中の第9章に『自己反省に徹し本心に目覚めるー吉本伊信“内観四十年”』と題して吉本伊信と内観が紹介されています。
②「無我の心理学」(竹内硬著・印刷 第一法規出版株式会社・1980・2500円)は、自身も内観を体験された信州大学教授が著した本です。全体で207頁もある本ですが、その中の後編(101-196頁)を内観に割いて紹介しています。
③「内観一筋 吉本伊信の生涯」(日本内観学会編・1989・1800円)は、吉本伊信が1988年8月1日に逝去されたため、同年9月25日に京都の御香宮参集館にて偲ぶ会が開催されました。そして、1周忌の命日(1989年8月1日)に合わせて、偲ぶ会の様子を第一部に盛り込んで発刊されています。
④「内観―こころは劇的に変えられる」(長島美稚子、横山茂生著・法研・1997・1300円)は、内観面接者と精神科医の共著として出版されています。第3章に療法としての「内観」について述べた後、第4章には、内観研修所へ行かなくても自宅で実践するテクニックが紹介されています。
⑤「内観ワークー三つのキーワードで本当の自分に出会うー」(三木善彦、三木潤子著・二見書房・1998・1500円)は、書名が示す通りにワークシート付きの本です。内観体験者には内観ワークの仕方が紹介されているのが嬉しくなるに違いありません。本書には内観療法という言葉こそ出てきませんが、不登校、摂食障害(過食症・拒食症)の例が紹介されています。
⑥「内観療法の実践」(笹野友寿著・芙蓉書房出版・1998・1500円)は、自ら集中内観を体験した精神科医が、治療の事例を紹介し、内観療法の意義を説いた本です。事例には解離性障害、身体化障害、摂食障害、抑うつ神経症が取りあげられています。
⑦「病気でも家族と幸せに暮らせる内観療法―家族内観の方法と実際」(上野みゆき著・光雲社・2001・1600円)では、家族内観療法の効用が事例を通して紹介されていますが、どちらかと言えば、一般読者を対象にして書かれたもののようです。

【内観療法の臨床家や研究者向けの学術書】
①「内観研究」は、日本内観学会が発行している研究誌です。日本内観学会は1978年に発足されて以来、毎年1回、全国各地で大会を開催してきましたが、1995年4月15日に第1巻第1号を刊行するに至りました。今年の2007年4月15日には第13号を数えますが、大会中に発表された研究発表の中から座長の推薦を得て、精選された論文に加筆がなされたうえで掲載されていますので、臨床家や研究者にはお勧めです。
②「内観医学」は、1998年に発足した日本内観医学会が発行している専門研究誌です。両書は通読すると言うよりも、臨床家と研究者の本棚には必携の研究誌であり、必要に応じてページを捲ればきっと役に立つこと請け合いです。しかし、両書は一般の書店では取り扱っていません。それぞれの学会事務局か内観センターにお問い合わせください。
③「内観療法」(奥村二吉、佐藤幸治、山本晴雄編集・医学書院)は、1972年1月に第1版1刷が出版されていますが、現在は絶版となっています。そして、
④「禅的療法・内観法」(佐藤幸治編著・文光堂)は、同年の9月15日にサイコセラピー・シリーズの一つとして出版されました。両書によって内観は、内観療法としての認知度を高めたと言う人もいるくらいですが、これも絶版です。
⑤「原事実について」(奥村二吉著・岡山大学医学部神経精神医学教室・1985)は非売品となっていますが、相当なプレミアがついてもおかしくない名著だと言われています。岡山大学医学部教授を定年退官された著者の満80歳の誕生日を記念して出版されたようですが、内観について思うことが書かれてあり、一読の価値があります。
⑥「瞑想の心理療法―内観療法の理論と実践」、現代のエスプリ202号(竹元隆洋編著・至文堂)は、1984年に出版されました。内観療法の基本原理や治癒機制を論じた論文、さらには他の精神療法との比較を試みた論考などが盛り込まれて、多彩で興味深い内容が並んでいます。内観臨床の第一人者である編者による解説や考察も定評があり、読み応えも十分です。
⑦「内観 理論と文化関連性」(村瀬孝雄著・誠信書房・1996)は、著者の村瀬孝雄が自ら内観を体験して以来、28年を経てまとめた大作です。内観療法の理論化を試みた素直論など、日本文化との関連で考察した数々の論考が納めてあり、内観の専門家にとっては必読書の一つだと言ってよいでしょう。
⑧「内観療法」(川原隆造著・新興医学出版社・1996)は、大学のテキストに最適な内容になっています。まず、内観療法関連の用語を取り上げ、著者なりの再定義を試みることをはじめとして、各種心理テストや生理学的検査所見、内観療法の治療機序、各疾患別への適用について解説しているからです。
⑨「内観療法の臨床―理論とその応用」(川原隆造編・新興医学出版社・1998・7500円)は、総勢31名の臨床家と研究者によって執筆された、それこそ専門家向けの学術書であり、値段は高額にはなっていますが、内観の臨床家や研究者にとっては欠かせない豊富な内容が盛り込まれています。
⑩「心理療法の本質を考えるー内観療法を考える」(川原隆造、東豊、三木善彦編・日本評論社・1999・2300円)は、類書に例のない内容となっています。具体的には、鳥取大学医学部で開催された内観療法シンポジウムにおいて、内観療法の事例報告が行われ、それに対して、精神病理学、精神分析学、認知行動療法、ブリーフセラピーの第一人者が自派の療法の核心から内観療法の有効性を検討し、吟味するという画期的な試みが実現され、それを収録したのが本書になったからです。
⑪「東洋思想と精神療法―東西精神文化の邂逅」(川原隆造、巽信夫、吉岡伸一編・日本評論社・2004・2500円)もまた、学会のシンポジウムと講演を収録して出版されたものです。ここでの学会は、2003年10月10日~12日に米子コンベンションセンターで開催された第1回国際内観療法学会・第6回日本内観医学会のことです。執筆陣はアメリカ、中国、韓国、そして日本の4カ国で構成されていて、まさに東西精神文化の邂逅が実現されています。
⑫「心理療法としての内観」(真栄城輝明著・朱鷺書房・2005・2800円)は、内観のルーツから治療構造、臨床応用まで、長年の臨床探求から得られた成果を集成したもので、内観を通して心理療法の真髄に迫ろうとしたものです。巻末には、これまで出版された内観関係文献の一覧が掲載されています。
⑬「内観療法の現在―日本文化から生まれた心理療法」(三木善彦、真栄城輝明編・現代のエスプリ・至文堂・2006・1381円)は、表題のテーマでメール座談会が行われ、内観療法の歴史を振り返りつつ、各分野における内観療法のあり方についても話し合われています。具体的な内容は以下の通りです。
<内観療法の実践の現在><カウンセリングと内観><教育と内観><内観療法の本質><内観療法研究のトピックス><内観療法の展開><内観療法の展望>などが、それこそ多彩な論陣によって紙面を飾っています。
⑭「内観法―実践の仕組みと理論」(長山恵一、清水康弘著・日本評論社・2006・7600円)は、内観体験の展開を内観原法のプロセスに即してきわめて具体的かつ丁寧に論じた話題作です。本書の主題は内観法のようですが、内観療法についても他の療法と比較しながら理論化しつつ、心理療法それ自体への提言を試みるという意欲作であると同時に、大作になっています。
【内観法に関する本】
①「心の探検―内観法」(楠正三著・桐原書店・1975・1500円)
②「不安からの脱出―人生を変える内観法入門―」(楠正三著・ブレーン・ダイナミックス・1977・950円)
③「東洋の知恵・内観―こころの洗濯法」(金光寿郎著・光雲社・1984・1500円)
⑤「驚異の自己活性法―『内観法』入門―」(柳田鶴声著・同友館・1985・1300円)
⑥「愛の心理療法 内観―よろこびとやすらぎの世界」(柳田鶴声著・いなほ書房・1989・1300円)
⑦「禅と内観―不安と葛藤の中を生きるヒント」(村松基之亮著・朱鷺書房・1991・1545円)
⑧「家族―心のメッセージ」(清水志津子著・いなほ書房・1995・1500円)
⑨「内観実践論―自己確立の修行法」(柳田鶴声著・いなほ書房・1995・1300円)
⑩「忘れていた“心の宝”と出会える本―『内観』であなたも生まれ変わる」(三木善彦著・同朋舎・1997・950円)
⑪「健康と内観法15章」(草野亮著・アテネ社・1997・1500円)
⑫「内観法はなぜ効くかー自己洞察の科学」(波多野二三彦著・信山社・1998・3000円)
⑬「一週間で自己変革『内観法』の驚異」(石井光著・講談社・1999・1400円)
⑭「証言集 吉本伊信と内観法1―吉本伊信との五十年」(塩崎伊知朗、竹元隆洋編 証言者 中田琴恵 吉本キヌ子 長島正博・日本図書刊行会・2000・1500円)
⑮「家族・友達・仕事のために自分を知ろう」(西田憲正著・内観双書・2001・1575円)
⑯「心理臨床からみた心のふしぎー内観をめぐる話」(真栄城輝明著・朱鷺書房・2001・1600円)
⑰「内観法と吉本伊信―幸福の発見法を確立した人―」(宮崎忠男著・近代文芸社・2001・1000円)
⑱「内観で<自分>と出会う」(長島正博、長島美稚子著・春秋社・2001・1800円)
⑲「内観に救われてー愛の再体験―」(三宅忠六著・文芸社・2006・1300円)
【内観教育】
①「子どもが優しくなる秘けつー3つの質問(内観)で心を育む」(石井光編著・教育出版・2003・1800円)
②「思いやりを育てる内観エクササイズー道徳・特活・教科・生徒指導での実践」(国分康孝、国分久子監修・飯野哲朗編著・図書文化・2005・2000円)
【内観に関するその他の本】
①「花のいのちー人を愛し、歌を愛して」(島倉千代子著・みき書房・1983・1000円)
②「あなたもとりゃんせーこのみち五十年」(水野秀法著・柏樹社・1983・1200円)
③「答えは自分の中にー人生案内の窓から」(三木善彦著・ブレーン出版・1995・1500円)
④「『反省・内観』で心を知る」(助安由吉著・エイト社・1998・1000円)
⑤「人は何によって輝くのか」(神渡良平著・PHP研究所・1999・1500円)
⑥「内観の霊性を求めて(1)―心の内なる旅」(藤原直達著・カトリック内観研究会発行・2002・非売品)
⑦「内観の霊性を求めて(2)―心の深海の景色」(藤原直達著・カトリック内観研究会発行・2004・非売品)
⑧「内観の霊性を求めて(3)―ナムの道もアーメンの道も」(藤原直達著・カトリック内観研究会発行・2005・非売品)
【吉本伊信が著した本】
ここには、一般の書店で入手できるものだけを記しておきます。
①「内観法」(吉本伊信著・初版は「内観四十年」として1965年に出版されるが、2000年に新装改訂されて、初版同様に春秋社から出版された。2000円)
②「内観への招待―愛情の再発見と自己洞察のすすめ」(吉本伊信著・朱鷺書房・1983・1200円)
【エピローグ】
周知のように、吉本伊信は自身を内観のチンドン屋と称して、生涯を内観普及に捧げました。「内観の理論化は学者(研究者)の先生方にお任せしたいと思います」と言って、自身は内観の実践に重きを置いて、内観三昧の生活を通しました。別の言い方をすれば、吉本伊信は行動の人でした。全国各地へ出かけて行っての講演活動はもとより、篤志面接員として奈良少年刑務所に精力的に通ったことも有名な話です。
また、多数の書籍や小冊子だけでなく、テープ(カセットやビデオ)なども遺しています。吉本伊信の声が聞きたいという方や資料が必要な方は、直接、内観センター(奈良県大和郡山市高田口町9-2・℡:0743-54-9432)までお問い合わせくださるとよいでしょう。
(本文は、「内観療法」三木善彦・真栄城輝明・竹元隆洋編著・ミネルヴァ書房・2007,10,20発行 より抜粋して掲載いたしました。)

内観療法ワークショップへのご案内

第19回内観療法ワークショップ

大会テーマ
混迷する現代に求められるもの

平成19年10月27日(土)~28日(日)
会場 奈良市男女共同参画センター あすなら
奈良市三条本町8番1号 TEL0742-34-1525

nara


主 催:日本内観学会
後 援:奈良県臨床心理士会
事務局:大和内観研修所(所長・真栄城輝明)
〒639-1133 奈良県大和郡山市高田口9-2
TEL 0743-52-2579 FAX 0743-54-1376
E-mail naikan3@nifty.com

 プログラム 
第1日目 受  付(ビデオとスライドによる内観の紹介)11:30~12:30
開会の辞 日本内観学会理事長 巽 信夫
               大会長 真栄城輝明  12:30~12:45

【特別講演 】     座長:三木善彦

「衰退に“突入した”日本ー姿を変えた子供の『いじめられ死』を含めて」
  土屋 守(土屋医院院長・精神科医・NHK・TV出演)12:45~14:00       

体験講話 内観体験講話:宮川 治(精神科医) 14:10~14:40
休   憩

分科会 入門コースー内観実習(14:50~18:25)

    講 師:長島正博(北陸内観研修所所長)
        本山陽一(白金台内観研修所所長)
        木村秀子(米子内観研修所所長)
  面接協力者:西山徳子(なわて内観研修所)
        平山恵美子(沖縄内観研修所)
        藤浪宏典(和歌山内観研修所)


15:00~18:00
応用コース 討論会 「教育問題を考える」
         (座長:栗本藤基・喜多 等)
パネリスト  上田貞夫 (御所市教育委員会・教育長)
   土肥由美子(元富山県少年警察補導員・SC※)
   飯野哲朗 (静岡県立川根高校・教頭)
   石田陽彦 (奈良県臨床心理士会長・SC)
 
専門コース 事例検討会 *要守秘義務
        (座長:堀井茂男・笹野友寿)
提供者 橋本章子(自然科学研究機構化学生理学研究所)
助言者 岡部憲二郎(天理よろず相談所病院心療内科)
東 睦広 (近畿大学医学部講師)

懇親会 JALホテル5F天空の間 18:30~20:30

第2日目 受   付   9:00~9:30

    シンポジウム   9:30~12:00

      テーマ 「混迷する現代をどう生きるか」
        (座長:巽 信夫・真栄城輝明)

演者
   人見一彦(近畿大学医学部教授) 精神医学の立場から
   木村慧心(日本ヨーガ療法学会理事長) ヨーガの立場から
   藤原直達(カトリック大阪大司教区神父)キリスト教の立場から   
  大山真弘(蓮華院誕生寺・真言宗僧侶) 仏教の立場から

      休   憩
体験発表 内観体験発表(二名) 13:00~13:30
【招待講演】 座長:吉本清信 13:45~15:00

「まほろばを求めて」 安田 瑛胤(薬師寺管長)

閉会の辞   次年度実行委員長 塚崎 稔
        副大会長     西山知洋 15:00~15:15

ごあいさつ

この度、この国のまほろば(奈良)において第19回内観療法ワークショップを開催することになりました。

 当地は、今や世界の注目を集める内観の発祥の地でありながら、灯台もと暗しと言うのでしょうか、内観の知名度はいまひとつの感があります。そこで、この機会に全国各地でご活躍中の内観専門家のご協力を得て、『混迷する時代が求めるもの』という大会テーマを掲げ、以下のような内容で研修会を企画致しました。

 講演とシンポジウム並びに分科会には、奈良の特色を生かした講師陣をお招きしており、必ずや参加者に満足いただけるものと確信しております。定員(百名)に限りはありますが、皆様のご参加をお待ちしております。
実行委員長 真栄城輝明

講師紹介

安田 瑛胤(やすだ えいいん)
法相宗大本山薬師寺管主。岐阜県岐阜市生まれ。龍谷大学文学部仏教学科卒業・同大学院修士課程修了。昭和38年宗教者平和使節団団員としてヨーロッパ各地の宗教者と懇談。翌39年名古屋大学学術調査隊員としてアフガニスタンを踏査。平成12年世界宗教者平和会議日本委員会非武装・和解委員会委員長及び日中韓国際仏教交流協議会常任副理事長に就任。平成15年より現職。著書に『心の道しるべ』 『この道を行く』(講談社)など多数。

土屋 守 (つちや まもる)
土屋医院院長、精神科医。埼玉県立浦和高校通信教育部、京都大学農学部卒業。国際基督教大学大学院修士課程修了後、京都府立朱雀高校教諭となる。昭和51年退職し、鳥取大学医学部に入学。卒業後、同大付属病院に勤務。昭和62年京都大学研修員として「大脳辺縁系」の研究に携わるかたわら、京都府内の精神病院に勤務。「いじめられ死」が社会問題化するなか、NHKや民法にて各界の識者と対談を重ねる。平成6年「京都新聞・社会賞」平成7年日本医師会「最高優功賞」を受賞。著作に『開業精神科医の”あり方”を模索して』(思文閣出版)など多数。

参加費用

一般参加   1日間 3,000円
       2日間 6,000円
学生・会員  1日間 2,500円
       2日間    5,000円
      懇親会費 7,000円

【申込方法】
同封の専用振込用紙に必要事項を記入して、郵便振替にてお申し込みください。
ご都合により当日ご来場いただけない場合の参加料金の返却はいたしませんので、ご了承ください。
【締め切り】
平成19年10月20日(土)到着分を持って締め切りといたします。
なお、9月末までに振り込まれる方は、該当する参加費から500円引き、ご予約のない方の当日参加は、500円増しとなります。ご留意ください。
【受 付】
当日受付にて名簿と確認させていただきます。当日参加は若干名に限らせていただきます。
【特 典】
臨床心理士の方及び心身医学会所属の方は、二日間の受講により(財)日本臨床心理士認定協会並びに心身医学会の研修ポイントとなります。

【大会顧問】
三木 善彦(帝塚山大学教授)
【大会長】           【副大会長】
真栄城輝明(大和内観研修所)    西山知洋(なわて内観研修所)
【準備委員】(五十音順)
大高菜絵・勝見ひろみ・亀山京香・岸真知子・栗本藤基・近藤美奈・酒井ゆり子・榊原伸・竹中哲子・
田中櫻子・中根幸江・中村ひろみ・西山徳子・橋本俊之・藤浪宏典・前田起代栄・吉本清信・吉本千弦


〒630-8122 奈良市三条本町8番1号
TEL 0742-34-1525
・JR奈良駅下車  西改札口すぐ
・近鉄新大宮駅下車 徒歩約13分
【問い合わせ】
大会事務局 大和内観研修所 
  〒639-1133 奈良県大和郡山市高田口9-2
TEL 0743-52-2579 FAX 0743-54-1376 
E-mail:naikan3@nifty.com

<奈良市男女共同参画センター>
  あすなら


asunara


◎内観療法ワークショップは、御陰様で参加定員に達しましたので、申し込みをうち切らせていただきました。当日は、準備委員一同、心を込めてご参加の皆様をお迎えしたいと思います。これからお申し込みを戴く皆様には大変申し訳ありませんが、次の機会にご参加いただきますよう、お詫びかたがたお願い申し上げます。

内観講演会のご案内

<内観特別講演会のご案内>

講演テーマ
「内観への招待」~内観で心も体も晴れやかに

内容
ストレスの多い生活に疲れて身も心も調子を崩していませんか?
日本生まれの心理療法・内観療法で、心も体も晴れやかにしませんか。
講演では内観の方法を伝え、簡単な実習もいたします

講師 三木善彦
   手塚山大学心理福祉学部心理学科教授
   大阪大学名誉教授
   奈良県臨床心理士会会長
   元読売新聞人生相談回答者
   日本内観学会顧問

日時 平成19年7月22日(日)13:00~17:00
会場 大和郡山市市民交流会館
   JR郡山駅下車、東口すぐ(駐車場は隣のハーベス2時間まで無料)

主催  第19回内観療法ワークショップ in 奈良実行委員会
事務局 大和内観研修所(〒639-1133 奈良県大和郡山市高田口町9ー2)
    電話 0743-52-2579
FAX 0743-54-1376
e-mail naikan3@nifty.com

*当日は体験発表も予定されています。ぜひ、お運び下さい。
 参加費は学生は無料です。一般は500円(資料代として)です。


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