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内観療法ワークショップin 立命館の印象記

第一回内観療法ワークショップIN立命館 印象記

橋本さん

橋本 俊之(立命館大学大学院応用人間科学研究科)  

内観を縁にした出会いの場

 平成19年3月3日、立命館大学衣笠キャンパス創思館(京都市北区)にて、大和内観研修所所長・真栄城輝明先生を講師としてお招きして、内観療法ワークショップを開催しました。
 ワークショップには、立命館大学大学院生を主に、他大学院生、留学生、一般参加も含めまして、16名の参加がありました。多くが対人援助職にかかわる職業及び学業に従事されています。会場は創思館のトレーニングルーム2という約10㎡のスペースで、講師を中心に、弧を描くように参加者が並びました。
 あいさつに続きまして、真栄城先生から「内観療法のワークショップを三時間でやった経験がないのです」という言葉がありました。スタッフとしては「やったことがないことをしてしまったのかな」と内心ドキドキしていました。「参加者一人ひとりのお顔を見てから、ワークショップの内容を考えてみたい」という提案に導かれるように、自己紹介が始まりました。スタッフの失態は続きます。実は名簿には、参加者の氏名だけで、お名前が記載されていません。そのため、自己紹介では、最初に「あなたのお名前は」「どのような漢字を書きますか」の確認から始まりました。その時、参加者からお名前の由来を語られる場合もありまして、お名前には、その人物をこの場に表わす、確かな力があるのだと実感しました。また、留学生の参加もありまして、「ぜひ母国語で」「言葉ではなく身振りに注目して」という講師の促しにより、結果的に場の雰囲気が非常に和んだように感じます。
 次に「心理療法としての内観」の講義に入ります。まず、前夜に先生自身が、内観をされたことを伝えられました。「明日は大学院生という若い、フレッシュな人たちとお話ができるのだ。」「どのようなお話をしようかな。」内観は進みます。「そう言えば、自分はどうしてこの仕事に、対人援助の仕事に就こうと思ったのだろうか」というエピソードを順に紹介していきます。人間を理解したかったことからはじまり、大学時代の脳波グループ、精神病院での実習体験がありました。そのとき、間直之助先生の『サルになった男』と出会い、サルと仲良くなる五つの方法を学んで、人間を理解する大きなきっかけを与えてもらったことが語られました。精神病院に勤務し、アルコール依存症の治療に入って、内観に巡りあったお話が続きます。内観の創始者である吉本伊信先生と出会い、集中内観を体験されました。その効果と内観療法により人間が劇的に変容していくことが、内観体験者に対する心理テストによる実証的な考察で明らかになり、「心理療法としての内観」の大きな可能性に魅了されていったのですね。そして、内観療法について、読んで字の通り「内を観ること」であり、その目的として「どんな逆境に苛まれようとも感謝報恩の気持ちで暮らせるようなこころのすみかに生まれ変わること」と紹介されました。最後に、スライドをつかって、病院臨床の時代の内観、内観の国際シンポジウムの様子、そして、大和内観研修所の施設紹介がありました。
 そして、西洋から生れた「カウンセリング」と、東洋から生れた「内観」の違いを体感するために、ロールプレイが三組実施されました。最初の組は喫茶店でお友達同士の会話を想定しました。次に、カウンセリング場面を想定した組では、まず一方の話を、一方が徹底的に無視する条件が与えられます。3分間でしたが、話す方も、無視する方も、15秒も持ちませんでした。話す方はもちろんですが、無視する方についてもこれほど辛いものであるとは思いませんでした。逆に、聞き手が相手を無視するのではなくて、傾聴して、積極的に相手の話を聞くスタイルになったとき、3分間はあっと言う前に過ぎ去っていきます。とても不思議な体験でした。
 ロールプレイの最後に、内観面接です。その前に、参加者全員で、小学校低学年のときの、母に対する自分についての内観が行われました。一人ひとりが、講師の声に耳を傾けながら、約5分間、目を瞑りながら、調べていきます。それから内観面接に入ります。スタッフである私が、面接者を担当しました。はじめての内観面接者ですので、これまで体験してきた内観面接においての、真栄城先生の言葉を思い出しながら臨みました。正直、「何を言えばいいのか」ばかり気になってしまって、内観者の言葉をお伺いする余裕がありませんでしたので、内観者の方も当惑されていたと思います。「全部を話すことはないのです。面接が主ではない。一時間半なら一時間半、調べることが大切です。そして、自分で自分を知ることが大事です」と先生から暖かい言葉がありました。面接に入ってみて、内観面接者も内観者同様、自分を見つめることが大切であると、あらためて感じます。「一人で面接する理由は」「お母さんをまず調べる意味は」「虐待を受けた子どもはどうするの」など、いい質問が続々出てきます。講師から質問者に対する対話的なやりとりで、参加者全員が具体的に内観に入り込んでいく時間が流れていました。特に、内観面接者との信頼関係の構築において、「人は言葉以上に、我々は生きているんだということです。言葉は頼りないですよね」という講師の説明が印象に残っています。いよいよ実習に入ります。参加者全員がその場で、あるいは別室に移動して、小学校高学年のときの、母に対する自分について、約十分間調べてみます。そして、二人一組のペアとなって、交互に内観者と内観面接者を体験します。実習が終わった後、再び元の状態に座って、それぞれの体験を共有しました。「なかなか思い出せない」「全然思い出せない」「して返したことが思い浮かばない」という意見が多かったです。また、「母親がそうだと思っていたことが実は自分もそうだったのではないか」「嫌な気持ちが暖かい気持ちに変わってきた」「思い出すことにより母のイメージが変わってきた」「迷惑をかけたことばっかりだった」「内観で忘れていた事をイメージするようになった」「思い出せないけど、一緒にやったことはたくさんあったのかな」「大変手がかかったいい息子だったように思える。母は嬉しかったのではないか」というユニークな意見も出てきました。
 最後に、講師である真栄城輝明先生から、対人援助の仕事に携わる参加者の皆さんにメッセージがありました。「自分をいつもチェックする目。自分を見つめる眼差し。これは大切にしてください。別に内観でなくてもいい。日記を書くだけでもいい。今日、自分はどうだったのかを見つめてみてください。そして、やってみようと思う人は、(集中内観にて)一週間、こもってみてください。」
 立命館大学での内観療法ワークショップは、このように無事終了することができました。事後のアンケートにて、「関心が持てた。具体的なイメージにつながった」「内観について、より詳しく聞けてよかった。ぜひ一週間こもってみたいです」「進め方がゆっくり感じた。私自身のペースが忙しすぎるのかもしれない」「文化も考えてカウンセリングをしなければならない。実践を通して知識が得られてうれしい」「母への想いが違った方向で思い出された」という様々な意見がありました。三時間という少ない時間のなかでのワークショップでしたが、やってみてよかった!と思います。また、「もう少し時間がほしかった」「休憩がほしかった」という反省すべき意見もありました。スタッフとして、今後の宿題とさせていただきます。
 最後になりましたが、このような機会をいただきました立命館大学応用人間科学研究科の中川吉晴先生をはじめ、同研究科の先生、独立研究科事務室の皆さん、企画運営に協力していただきました同研究科院生の細見真喜子さん、後片付けに協力していただきました同研究科院生の八木宏子さん、西澤美和さん、ワークショップに参加していただきました皆さん、本当にありがとうございました。そして、お忙しい中、遠い奈良からご足労いただきました真栄城輝明先生に、心より感謝申し上げたいと思います。




ワークショップ会場となった立命館大学創思館
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【参加者から寄せられた感想】

<20代男性>
①先生の話、もっと聞きたいです。もっとできる時間があればよかった。
②大学院最後の授業として、大変充実した時間が過ごせました。
③短い時間でしたが、実際体験することで、具体的なイメージにつながった。
④一週間のコースにも興味わきました。橋本さんにまた「縁」のかりが出来ました。(笑)
<20代女性>
① 内観については、学部の授業で教えてもらったことがあったけど、より、くわしくきけてよかった。
②実際に体験することができてよかった。自分は母親に何もしてあげてなかった。迷惑かけた、母はつらかっただろうなと、自分をせめてしまって、つらくなったけれど、いろんな人の話で、少しいやされました。ぜひ一週間、こもってみたいです。
③心理療法、カウンセリングと内観のちがいや、東洋的思想など、そのバックグラウンドがよくわかった。
④本でよんで自分で「マネ」してみたことはあったが、集団で体験するペアがいると、促進しやすいと思った。
⑤文化に合わせた心理療法の形があるというお話が印象的でした。
⑥昔のことを一人の人との関係に焦点をしぼってふり返るのははじめての体験でした。何も思い出せないと思ったがいろいろ思い出されることがあった。親のことは思いではイライラするようなことばかりと思っていたが、日頃、思い出さないようにしていたのではないかと思うくらい、忘れていたことがたくさんあった。
<30代男性>
①とても興味深く面白かったです。抹香臭いかな、と思って、今までやったことがなかったのですが、参加して良かったです。カウンセリングにも生かせる部分が多いと思います。
②すぐには上手くできないけど、何度かやれば思い出せそうな気がします。内観、一度やってみたいと思いました。
③真栄城先生の眼にとても力があり、暖かいものを感じました。どうもありがとうございました。
④内観は、仏教から生れたカウンセリングと言う言を初めて知った。先生の話にぐっと引き込まれるようだった。
⑤内観とカウンセリング、精神分析の違いなどを通して、今、自分がやっていることを見直すことができた。いい面、悪い面などを振り返ることが出来た。
<30代女性>
①講義をおききして、いっぱい知りたいことがでてきたので、今後は今日得た疑問を深めていきたいと思いました。セラピストとして内観の大切さを実感しました。
②だんだんうかんできて、もう一度子ども時代を体験できたうれしさがあります。
③とてもおもしろかった。先生のお話をきいていて、ふとフロムの「愛するという事」という本を思い出した。
④愛は与えるだけでなく受け取り、自分のものとして抱きしめる事も大事だ。
<40代男性>
①本を購入して読ませていただきます。橋本君が以前より話していた内観に触れてよかったです。
②もっと体験して実感するものと思います。時間をつくって大和内観研修所に行ってみたい気になりました。ありがとうございました。
<50代女性>
①文化も考えてカウンセリングをしなければならない。「感謝は?してもらったこと」が出てくるとエネルギーが出てきた証拠?ということばは元気になります。
②使うことばや作法について、実践を通して知識が得られてうれしいです。
③普段思い出してみなかった点に焦点をあてて、母に対して、想いおこしてみたことで、母への想いが違った方向で思い出された。
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