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No.19


少年の祈り  
             大和内観研修所 真栄城 輝明

 
1月23日の新聞に名護市長選の結果が報じられた。沖縄では米軍普天間飛行場移設問題が大きな争点になっているが、どこへ移そうと問題は解決しない、と教わったことがある。
それは、小学校低学年の頃のことだ。
「オイ、昨日のミサイル、すごかったぞ!」
大柄の優太は、教室の一番後ろの席で、人一倍大きな声で興奮気味に昨日見たミサイルの話しを始めた。いつものことだが、優太のまわりにクラスの男の子たちが集まってきた。
「ぼくもみたぞ、カッコよかったなぁ」
優太に同調して哲雄が言った。子どもたちの住む村には丘に囲まれた平野が広がっていたが、丘のほとんどは米軍基地として使われていた。平和な村の男の子たちは、時々姿を見せるミサイルに逞しい男性像を投影していたのであろう、勢い話しは肥大し、止まるところがなかった。
「ぼくのおとうさんは、司令官と友達なので、今度の休みには、ミサイルに乗せてもらうんだ」
村長の息子が調子に乗ってホラを吹いた。
「すごいなぁ、いいなぁ」
ぼくは口には出さなかったけど、村長の息子がうらやましくて、心の中で嫉妬した。
優太のように堂々と「ぼくも乗せてくれよ」とは言えなかったのである。ぼくは転校してきたばかりで、まだ友達がいなかったからだ。
ミサイルというのは、小学校のすぐ上の丘にある米軍基地にときどき姿を見せる弾頭を装着した誘導弾のことである。その姿形は愛知県小牧市の田懸神社に奉納されている男根よりもはるかに立派である。それを知る由もなかったが、男の子たちには憧れの的であった。
沖縄の人口は、平成9年に120万を数えているが、県下五三市町村のうち25市町村にわたって39施設に米軍基地(24,286ha)が所在し、県土面積の10.7%を占めている。つまり、沖縄に日本の4分の3の米軍基地があって、実に、全国の74.8%の米軍基地が沖縄に集中していることになる。よくマスコミは、「沖縄には基地がある」という表現をするが、沖縄に生まれ育った身にはそれはちょっとちがうなぁ、と思ってしまう。実感を言うならば、「沖縄に基地があるのではなく、基地の中に沖縄がある」というのがぴったりなのである。
さて、男の子たちの話しは、現実と空想が入り混じって次第にエスカレートするばかりだ。
そこに、始業のベルが鳴った。どうやら担任の美佐先生は、子どもたちの会話の一部始終を聞いていたらしく、今まで見せたことのない悲愴な面持ちで、こう話し始めたのである。
「さっき、男の子たちがミサイルに乗りたい、という話しをしていましたが、みなさん、ミサイルがどういうものか知ってるんですか?」
美佐先生は一人ひとりに諭すように話した。優太も哲雄も村長の息子までもさっきの元気はどこへ行ったのか、みな黙って聞いている。
美佐先生の表情には気迫がこもっていた。
「ミサイルには、原子爆弾が積まれていて、もし、あのミサイルが飛び立つことがあれば、この沖縄は、吹っ飛んでしまうのですよ。沖縄だけでなく、日本が、いや、世界がなくなるかもしれないのよ!」
教室中が静まり返った。ぼくは村長の息子をうらやましいと思ったことを恥じた。戦争の恐怖が襲ってきた。翌日、米軍基地にミサイルがそびえた。ぼくは人目を避け、手を合わせた。
「どうか、ミサイルさん、飛ばないでください!戦争にだけは行かないでください」
ミサイルが姿を現すたびに必死に祈った。祈るしかなかった。今、面接者として合掌するたびに、少年の頃の祈りを思い出す。

(『やすら樹96号』のシリーズ【内観をめぐるはなし】第53回より転載しました)
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